私のターゲット!

5月19日
 今日朝、●●ト●●川の滞納者、本当は今日の11時退去だったのに・・・・。
退去を1週間延ばして欲しいとのTEL!冗談じゃない!

「●●さん、チョット話が違うでしょ!今仕事なの?何処?」 「今、●●市です。」 私「何時に終わるの?」
「6時ごろには・・・。」 「じゃ6時半にこちらに来てください!」

 お昼の1時に管理部のSさんよりTEL。「今、●●ト●●川の●●さんが来ていますが・・・。」 私「えっ!ちょっと電話代わってよ!」
「もしもし、何で今来てるの?」「仕事が早く終わったので。」「ダメだよ!連絡もしないで。6時半の約束でしょ!」ホントにとぼけた奴だ。ちゃんと6時半にくるのかな?

 その6時過ぎ、来た!スーツ着てる。「なかなか背広姿が似合うじゃないですか」 「ちょっと先生の所に行ってたもんで・・・。」先生?弁護士?あっ行政書士か!

 「●●さん、破産するの?」「まだ、相談ですが・・。」「お金無いでしょ!どうすんの?」「分割で・・。」破産費用を分割?そんなん有りか?「うちの家賃債務は残しておいてや!」ンーこの辺は893.みたいな台詞。

「先生は全部いれてと言ってましたが・・。」 そりゃそうだ。どうせまだ出来ないだろうと思いつつ、「で、退去はいつ?」「さがしているのですがもう1週間待って下さい。」
 私「ダメ!」「お金入れてくれたら少しは考えるけど。お金ないでしょ!」たてつづけに、「今日いくら持ってるの?」彼「1000円しかないです。」多重債務者の彼は慣れている。サイフには本当、金は入れてこない。

さらに「今日の夕食代です・・・。」コンビニ弁当でも500円ぐらいあれば足りるだろ。「じゃ500円入金して下さい。」「エッ!本当に」「当たり前でしょ、それで4日間だけ退去まってあげるから。5月23日の1時までだよ。
あとは車の中で寝泊りして下さい。」「・・・・・・。」「当日は荷物が残ってたら倉庫に放り込むから!」 彼「わかりました・・。もう死ぬしかないかな」

 おいおい、私「逃げればどう?そんな勇気ない?」はにかみながら「ないです。」アホか簡単に死ぬとか言うな!でも本当に死なれたらこちらも寝覚めが悪い。こんな会話ばかりしているとすごく疲れる。唯一の救いは彼の荷物の少ないことだけ・・・。

5月20日
   私の調査対象者、すなわち私のターゲットであるが。まず、
☆ 滞納者リストの複数月で上がってくる人。
☆ 電話、携帯がつながらない(すぐに留守電に切り替わる、すぐ切れる)
☆ 契約書に書いてあった職場をやめている。
☆ 保証協会扱い。(連絡先が知人とか、友人はもうダメ!)
☆ 保証人、もしくは緊急連絡先につながらない。(親もほったらかし?)
☆ 督促による葉書が戻ってくる。(これなんて最悪)
☆ 更新手続きをしていない。(家賃も払えない?払わない?から)
☆ 男性、もしくは女性のみの入居なのに異性がいる。(たいがいは留守番     です。なんて言ったりするが、しっかり異性の肌着が干してある。)
☆ 電話の応対がすごい軽い奴。(アッわっかりました!)分かってないだ     ろ。
   だいたい上の項目に当てはまると滞納者特有のパターンが見えてくる。

 今日も朝から若い滞納者が一人。スーツ姿だ。「仕事は?」 彼「今日はお昼からと会社に言ってきました。」「どんな仕事?」「●町のファッションビルの管理会社です。」私「なかなかカッコいいじゃん。じゃ私の仕事もよく判るでしょ!家賃の滞納は。」 「すいません。」

管理部のNちゃんが言ってたけど、若いのになかなか丁寧な人みたいって。たしかに会話をしているとそれらしいが・・・。まず更新費用を捻出させる。

それから家賃の支払計画を立てさせる。もちろん彼の手取り額、現状の家賃以外の債務額もしっかり把握する必要がある。同じ事を繰り返しながら彼から本音を聞きだす。ギャンブル・酒・女・車など他愛もない話のなかで彼の支払能力を探す。22歳の彼は金融会社からはつまんでいない様子だ。もうちょい、信じて支払確約書を書いてもらう。

 午後からは母子家庭が2軒、単月滞納者の家族持ちが1軒、どちらも子供がいるのでメモもやさしく封筒に入れてポストにしのばせる。このあたりがサラ金の督促とは一味違う優しさを持つ。
アダになる事もあるが・・・。で、メモをみて電話が掛かってくる人はまだ良い。掛かって来ないと今度はメモに一筆加える「連絡がないと安否確認で緊急入室する事があります。」て、そうすると入金があったり、電話が掛かってくる。(これも5割ぐらいかな)

母子家庭の2軒が掛かって来ない。夜電話してみたけど小学生がいるはずなのにむなしくコールが鳴り響く。どないなってんねん!
   
5月21日
 駅●の物件、●●バ●●に向かう。オートロックの暗証番号をプッシュ、目ざすターゲットは8階だ。

ターゲットの多くは高層階の物件なら上の階が多い。エレベーターがないとホント大変だと思う。

いるかなぁ?例のごとくチャイムとノック!突然「キャワン!」の鳴き声、おかしいなペットダメじゃなかったかな?でも確かに聞こえたはず、すかさずもう一度チャイムとノック。「あれ?さっき聞こえたのに・・・おかしい!」もしかして今、中で必死にワンワンの口を噛み付かれながら押さえているのかな?

とりあえず封筒に訪問通知を入れてドアに貼り付ける。この物件ドアにポストがないから致し方ない。ここの滞納者資料を見てみると年収840万て書いてある、女性で61歳ぐらい、仕事?繁華街の飲み屋だけど私も何回か行ったことがあるけど思いだせない。
それにしても840万か!パパの分も入ってるのかな? 

●西の●ニ●パーキングの女性、車はオ●ティ、更新も迫っているのに・・・。今日、夕方来社して欲しいと通知書を封筒に包んでワイパーにはさんでおく。来るかなぁ?

 今日はまだ残り5つの要調査や督促訪問が待っている。 もうひとつ懸案の●●病院に行ってみる、例の救急車で運んだ老人、回復しているだろうか?

看護婦はもうだめだと言っていたが・・・。彼は除霊媒師だったらしい!多分今ごろたくさんの霊に誘われているかもしれない。ベッドに行くと若い看護士が彼のヒゲをそっていた。彼の耳もとで「先生・・・先生・・。」と呼んでみたが反応がない。どうしようか・・・。やっぱり除霊媒師なのでもう少し頑張れるのかなぁ?


 この頃、訪問通知をはさんできたターゲットからの電話が夕方からよく響く。かかってきたら必ず着信番号を記録し、出来る限り来社してもらうようにしている。いちばんマズイのは大勢の中に一人で行くこと。すぐ横槍がはいるので交渉にならないから。                            つづく



© Rakuten Group, Inc.